セニョーラ・あ〜の気ままな食卓

モードスパニッシュの世界に酔いしれる

奈良 レストラン「アコルドゥ

2019年12月9日 更新 2009年11月 公開

アコルドゥの料理

■心に残る思い出のレストラン

現在、モードスパニッシュレストラン「アコルドゥ」は、奈良公園の一角(水門町)にて営業されています。(2016年12月に新装オープン)

以下、2014年3月まで営業されていた奈良・富雄での「アコルドゥ」グルメレポートです。スペイン「ムガリツ」の系統でありながら、日本らしさ、アコルドゥらしさが加わった料理は「素晴らしい」の一言でした。

独自の世界観で楽しませてくれたディナーコース(クロロフィリアのショートコース 6品)2009年秋のメニューをご紹介しますね。

■グルメデータ

レストラン:アコルドゥ(奈良)

訪問日時:2009年11月中旬 ディナータイム

内容:少なめのディナーコース(6,000円)とグラスワイン5杯セット(3,800円)を2人で。

■■■目次■■■

【1】電車で奈良から15分、大阪難波からは30分

【2】クロロフィルショートコース+ワイン5杯セット

【3】東京からでも行きたいレストラン

【4】アコルドゥ関連メモ

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電車で奈良から15分、大阪難波からは30分

レストランの入り口

場所は、奈良市富雄。最寄り駅は近鉄奈良線の富雄駅で、近鉄奈良からは約15分、大阪難波からは30~40分程度のところです。駅前にあるので、ホームからでも元変電所だったという煉瓦造りの洋館が見えます。

西口を出て道路を渡ればもうお店。入口には「akordu」と書かれた看板と、大きく口をあけたユニークなイラストのメニュー案内があります。階段を上がれば玄関で、駐車場からは、庭の小径を通って行けるようになっていました。アプローチが素敵ですね。

まるで和製「ムガリツ」?

店内テラス席

午後6時の開店と同時に伺いました。中は、天井高で広々としており、オープンキッチンが見え、テーブルの間隔には余裕があります。壁には暖炉。ちょうどスタッフが薪をくべている最中で、その揺らぐ炎を見ただけで、胸が躍りました。いい時間が過ごせそう。

案内されたのは、庭に面したテラス席です。木目調の内装や各テーブルの上のスプーンがぶら下がったオブジェなど、まるでスペイン「ムガリッツ」です。といっても、実際に「ムガリツ」には行ったことがないのですけれど。

テーブルのナプキン

ナプキン、カトラリー、メニューリスト、なにげに転がっている石ころや蔓を丸めた置物(?)など、すでにテーブルの上は準備が整っています。まるで開幕を待つ舞台のよう。席につき、飲み物をオーダーすれば、デグスタシオン「アコルドゥ-2009年秋-」のショーの始まりです。

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クロロフィルショートコース+ワイン5杯セット

ワイン

ここで少し後悔しました。クロロフィリアのショートコース(6,000円)を予約していたのです。せっかくここまで来たのに、なんでフル(9,000円)にしなかったんでしょう。無理を承知で、今からでも変更可能か尋ねてみましたが、やはりダメでした。すでにその日のハーブを摘み、下ごしらえがすんでいるので今からでは間に合わないと。そうですよね。

ならば、ワインで贅沢しようとリストを見ると、ワイン5杯セット(3,800円)なんてのがあるじゃないですか。料理に合わせて、泡1、白2、赤2を用意してくれるというのです。めちゃ、お得です。単品も充実していそうでしたが、今回はこれで。

アミューズ

▲ スペイン、マルコナ・アーモンドのアホ・ブランコと和歌山の梅干しの種

アーモンド

まずはスープのアホ・ブランコです。紙で出来た台座に乗ってものものしくやってきました。味は、確かにアーモンドベースの冷製スープ。上品に仕上げられています。梅干しの種がオブジェのように添えられて、オープニングとしてのつかみはさすがですね。

オリーブオイル

▲ オーストラリアとスペインのオイル、ハモンイベリコの塩とパン

パンには、2種類のオリーブオイルとハモンイベリコに使われる塩をつけてどうぞ、という訳です。オーストラリア産のしっかりとまろやかな味わいのものと、スペイン産のフレッシュな味わいのもので、その違いがよくわかる組み合わせでした。

スペイン産のオイルは、やや緑がかり青リンゴのようなさわやかさだったので、ひょっとしてアルベキーナ種?と思ったら、違いました。ピクアル種。ピクアル種がこんなにジューシーでフルーティだったとは・・・。

ほたてのプランチャ

▲ ホタテのプランチャ 栗とオリーブの山並み

外は香ばしく、中はレア状態に焼かれた帆立。その上に生栗のスライス。まわりはチョコレートソースと同色のオリーブの実です。

ぱっと見て、帆立はわかっても、オリーブとチョコレートソース、栗のスライスは食べてみないとわかりません。で、この3者が帆立と不思議に合うのです。カバとも絶妙。

その味を盛り上げる「山並み」という料理名がまたいいじゃないですか。まさに、メインもソースも、高く低く山並みのようなフォルムで、美しく迫ってきます。この後も叙情的な料理名と、それが表現されたお皿の上の世界にぐっと引き込まれるのでした。

魚介料理

▲ 漆黒の海 蒸した剣先と魚介のうまみの波打ち際

出ました、ネーミングの妙。お皿全体が白っぽくてわかりにくいかもしれませんが、漆黒の海に例えられているのは、茶色いきのこソースです。波打ち際にはミルクと魚介だしで作られた泡ソース。そこに剣先いかが横たわっているのです。手前にあるひとしずくのオリーブオイルも効いています。

繊細な味わいに、さざ波の音まで聞こえてきそう。うっとりしながらいただきました。すっかりアコルドゥの魔法にかかっています。ワインは軽い白で。

甘鯛のソテー

▲ アマダイのサルテアド 葛城八朔の皮 レンコン餅とジュ、シェリービネガーのヴィナグレタ

甘鯛のソテーアップ

添えられたルッコラは自家製でしょうか、虫食いがなんとも言えずいい雰囲気です。パリパリの皮にふっくらしっとりとした甘鯛の身。その下には蓮根餅が敷かれていました。これが、めちゃくちゃおいしい。こんなので感動されても困るかもしれないけれど、蓮根のおいしさ再認識です。

四角いのは、はてなんだったか、今となっては思い出せません。オレンジ色のはからすみです。いやあ、最高ですね。ワインはこっくりとした白に。

羊肉料理

▲ 仔羊のすね肉の煮込み ミントと緑エキスのクリームリゾット

低温でじっくりと調理された仔羊。実はあまり煮込んだ仔羊は得意ではないく、しかも添えてあるのは、ミント味のリゾット? ダメかもしれないと思いつつ、仔羊を口に入れます。・・・。やはり仔羊の味。

しかし、添えられたリゾットの意外なおいしさにびっくりです。お米の仕上がりが柔らか過ぎずかた過ぎず、アルデンテでちょうどいい。ミント風味のご飯も全然違和感なく、癖のある仔羊に合うようでした。ワインは赤で。

店内カトラリーなど

どのワインも料理との相性を考慮して選ばれたものだけあって、のど越し良くはずれなし。しかもしっかり注いでくれるので、飲みごたえがあります。このあたりでいい気分になってきました。スプーンのオブジェもぼんやりうつろに。

鶏料理

▲ 柔らかな大和肉鶏 大和ふと葱のコンフィタード トリュフ風味

次のお肉は鶏。これまた皮がパリパリで肉はやわらかで、そして驚いたのが燻製の味と香りがする泡です。エル・ブジの料理などに出てきそうですが、さりげなくメインの鶏を引き立てる使われ方で、奇抜な印象はありません。アートな盛りつけは溜息ものです。手前のソレルというハーブもかわいい。ワインは重めの赤。

チーズプレート

▲ バスク、イディアサバルのチーズとマルメロのジャム

デザートの前のチーズプレートです。羊乳チーズとメンブリージョ(マルメロジャム)という王道の組み合わせです。ワインが美味しいなあ。転がっていた胡桃のかけらもしっかりいただきました。

クワハダ

▲ ピスタチオクリームのオーブン焼きクアハーダ マスカットとニワトコの花の香りのジュレ

いよいよデザートに突入です。クアハーダはミルクを凝固剤でかためたプリンのようなものですが、そのピスタチオ味。濃厚で滑らかな舌触りです。

アイスクリーム

▲ 「水面の月、スミレの海」御所のミルクとオレンジのジェラート 炭砂糖と薄いパイの砂浜 柑橘の雲

そしてクライマックス。極めつけがこれ。料理タイトルにあるとおり「水面の月、スミレの海」なわけですが、このスミレ色の海が、時間と共に少しずつ淡い浅葱色に変化していったのです。幻想的な雰囲気にうっとりです。海に浮かんだ花びら1枚、砂に見立てたパイの粉末もいいわ~。繊細ではかない詩的な一皿でした。

色変わりは恐らく柑橘系の泡に秘密があるのでしょうが、それを説明してもらったような、ないような、すっかり忘れてしまいました。これに限らず、丁寧に説明をしていただいたのですが、目の前の料理に目を奪われて・・ああ。

ハーブティ

▲ ハーブティ

小菓子

▲ 小菓子

最後は飲み物で、コーヒー、紅茶、ハーブティの中から、ハーブティをチョイスしました。庭のハーブを摘んで供されるフレッシュハーブには、ミントを中心にレモンバームなどさわやか系でまとめてあり、カップにはレモンの花の白い花びらが入っていました。ちょっとした演出が憎いです。

小菓子の黒砂糖ブロックを口の中で転がしながら、コースの余韻に浸るひととき。ああ、楽しかった。サービスも心地よく、ワインもおいしく、アコルドゥ風モダンスパニッシュに酔いしれた2時間半でした。

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東京からでも行きたいレストラン

結果的にクロロフィリアのショートコースでも十分でした。気分もお腹も大満足。ワイン5杯コースとの組み合わせがよかったのかもしれません。

アコルドゥの料理は、日本(関西)の感覚を取り入れながらも、まぎれもなく現代スペイン料理。アホ・ブランコやクワハーダ、メンブリージョに嬉しくなり、多彩なオリーブオイル使いに惚れ、芸術的とも言える盛りつけのセンスにしびれました。

「ムガリツ」のスピリッツを継承しつつ、独自の世界を築き上げていこうという「アコルドゥ」に、スタンディングオベーションです。

奈良は決して近くはないけれど、関西方面に行くときは足を伸ばして、また行きたいですね。できるならシーズンごとにでも通いたいくらい(無理だけど)。再訪必至。次回はぜひフルコースで。

(2009年11月訪問)

【関連レポート】

「アコルドゥ」2010年1月のディナーレポート(ブログ)

「アコルドゥ」2013年11月のディナーレポート

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アコルドゥ(akordu)

外観

奈良市富雄にある現代スペイン料理レストラン。シェフの川島宙氏は、スペイン「ムガリツ」での経験を機に、フレンチからモダンスパニッシュへと転向。2008年6月にアコルドゥ、オープン。同年いきなり「Hanako west」にて2008年度おいしい店グランプリに選ばれる。

2011年「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。地元の食材を用った季節感のあるイノベーティブな料理を提供。アコルドゥならではの記憶を呼び起こし、記憶に残る繊細な味わいを求めて、遠方から訪れるグルマンも多かった。

姉妹店に、2013年6月オープンしたバル「bajo111」(アコルドゥ敷地内)(のちに閉店)、同年7月にバル「ドノスティア」(大阪・ダイビル)がある。

ビルの老朽化に伴い、アコルドゥとバホ111は、2014年3月末をもって、閉店。ドノスティアは続行。2014年12月に姉妹店「abarotz(アバロッツ)」(東生駒)オープン。

2016年12月、奈良・水門町(県庁隣)にウエディングバンケットを備えた新生アコルドゥオープン。

川島氏はレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ ジャポン」が選ぶ2018年度の「今年のシェフ賞」に選ばれる。

「アコルドゥ」サイト

■ムガリツ(Mugaritz)

スペイン・バスク地方にあるミシュラン2ツ星だったこともあるレストラン。シェフのアンドーニ・ルイス・アドゥリスは、スペイン料理界の次世代を担うリーダー的存在。英国の「レストランマガジン」による世界のベストレストラン50で、「ムガリッツ」は2013年度は第4位、2015年度は6位、2019年度は7位に選ばれている。

※当レポートの情報は2009年11月のものです。

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