アアルトのアームチェア406がやってきた
アルヴァ・アアルトがデザインした「アームチェア406」が我が家にやってきました。受注生産品のため実物が届くまでに約半年かかりましたが、待った甲斐がありました。ご紹介しますね。
アームチェア406 (センプレ)
■■■目次■■■
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アアルト展でアームチェアに惚れる
アームチェア406の購入のきっかけは、2019年春に東京ステーションギャラリーで開催されていたアルヴァ・アアルト展です。実際に体験できるコーナーがあり、そこにアームチェアがあって一目惚れしたのです。
といっても、そこで見たのはアームチェア406ではなくて402。
背もたれの高いアームチェア401もありました。これらのアームチェアには、「ラメラ曲げ木」という技法が用いられています。(←展示で知った)
ちなみに「ラメラ曲げ木」というのは、数ミリの厚さにカットされたラメラ (lamella) と呼ばれるフィンランド産バーチ材の長い板を、木目が同じ方向になるよう何枚も重ね合わせて積層合板にし、それを加圧して曲げる技術のことです。
実際に腰掛けてみると、この木製フレームと座面がしなやかに身体を受け止めてくれ、なんとも心地いい。このままずっと座っていたい。こんな椅子がうちにあったらなあ。
帰宅してから、気になって価格を調べてみると、402で税込30万円以上。ううう、やはりそれぐらいはするよねえと諦めかけていたら、アームチェア406は、20万円ほどでであるじゃないですか。
シートがウェビングテープでカジュアルな雰囲気です。うちにはこっちのほうがいいかも?
▲ artek アームチェア406 (センプレ)
見ても触ってもないけど欲しいなあ。座面の色は白もいいけど、引き締まった黒がいいかなあ。これはご縁かもしれんぞ。
日増しに気持ちが募り、スツールE60を買った馴染みの「センプレ」サイトからポチッと注文するに至りました。
注文から約半年待ち
それから現物が届くまでは、♪届かぬ時間が愛育てるのさ〜♪目をつぶれば椅子がある〜♪の心境でした。
センプレから届いたラブレター、いや連絡メールは次のとおりです。
注文日:注文した時点で自動返信される受注メール。
翌日:お店から届く受注確認メール。受注生産品だからキャンセル不可ですよという念押しだったので「了解。注文して」と返す。
翌々日:お店からは「OK。納期は3〜5カ月後になります」とまたも念押しメール。
2週間後:お店から具体的な入荷日、配送日の連絡メール。6カ月後だった。待ち遠しい。
5カ月後:クレジットカードの引き落とし日の連絡メール。
6カ月後:発送しましたのメール。
そして、やっと我が家に到着しました。
段ボール箱を開け、プチプチの緩衝材に包まれたアームチェアを取り出します。ご対面〜。
ああ、美しい。アームから脚に続くこの曲線。肘掛けと一体になったカンチレバーチェアならではのフォルムです。
正面もいいじゃない。黒いリネンのウェビングテープの張りが初々しいです。
背面も見ましょう。よし、よし、よし。
アームチェア406の細部
今度は細かく見ていきますよ。
まずは正規品であることを示すアルテックのシールを探します。前方の座面フレームの裏側に貼ってありました。「DESIGN ALVAR AALTO」の文字ににんまり。アームの裏側にはシリアルナンバーも印字されています。
ウェビングテープはリネン。センプレには黒と白しかありませんでしたが、アルテックのサイトによれば、ほかにもグレーやピンクもあるようでした。汚れたり緩んだりしたら、張り替えられるのかな。
フレームを見ると、これがラメラ曲げ木の技術か〜というのがわかります。3〜4ミリの厚さのバーチ材が美しい積層合板になっていて、まるで無垢の木を曲げたかのようです。
スチール製にも負けない強度と耐久性があるそうですよ。「ラメラ曲げ木」すごい。
また、肘掛けを兼ねたフレームは、ひとつの太いフレームを造り、それを半分に切って両端に設置することで、アームチェアのバランスを保っているんだそうです。
なるほど、それなら経年によるひずみが出たとしても、左右同じように変化しますから安定していますよね。
ウェビングテープの処理も見てみましょう。どこも非常に頑丈にしっかりと留められ、どうやって留められているのかぱっと見ただけではわかりません。
よーく見るとホッチキスのようなものがかすかに見えます。場所によってやや斜めになっていたり、間隔を開けていたりと違いはあるものの、規則的に打たれています。
当たり前ですが、シートの上でガンガン力を加えてもびくともしませんよ。弾力があっていい具合にシートがしなるだけです。これが座り心地の良さにつながっているのでしょう。
全く気にならなかったのですが、センプレの商品説明欄に「裏面などの見えにくい部分には節や傷のような箇所がある場合がございます」となっていて、なんのことだろうと思ったら、フレームの脚の部分に、細かな筋状の染みのようなものがありました。
そばかすのようなものかな。かわいいものです。木材を無駄なく利用している証しですね。これがフィンランドの地で育ったバーチ(白樺)なんだなあと愛おしく感じるほどです。
アームチェアのある生活
肝心の座り心地はというと、そりゃあもうグッドです。座面はしっかりと張りがあり、体重をかけると適度にしなります。
ウェビングテープ仕様なので、熱がこもらず夏は涼しく座れそうです。今はクッションを敷いて使っています。
あと、なんといっても木肌の美しさ。肘掛けのすべすべした手触りが気に入っています。
ふだんはテレビの前に置いていますが、アームチェアは軽いので移動させやすいし、床を傷つけないのがいいですね。畳敷きでも大丈夫じゃないかな。
天気のよい日は窓際にもってきて、ゆっくり読書したりお茶を飲んだり……。アームチェアで過ごす時間を楽しんでいます。
アームチェア406 (センプレ)
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Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)とArtek(アルテック)
アルヴァ・アアルト(1898-1976)は、20世紀を代表するフィンランドの建築家。自然素材を近代建築へ取り入れたモダニズム建築の巨匠といわれています。建築のほかに、家具・照明器具・ガラス器なども手がけました。
1935年、アアルト夫妻を含め4人で始めた家具メーカーが、Artek(アルテック)。アルテックとは、アートとテクノロジーを掛け合わせた造語。木材を近代的な素材として確立し、確かなフォルムと安定した品質で、大量に供給できるようにしました。その技術は高く評価され、現在に引き継がれています。北欧モダンを代表するフィンランドの家具ブランドです。
(写真はアアルト展の会場にあった撮影用パネル)
アルヴァ・アアルト展
アアルトの生誕120周年にあたる2018年、回顧展「アルヴァ・アアルトーもうひとつの自然」が日本にもやってきました。ヴィトラデザインミュージアムとアルヴァ・アアルト美術館が企画した国際巡回展。日本では約20年ぶりとなる本格的なアアルトの回顧展(神奈川、名古屋、東京、青森で開催)でした。
東京ステーションギャラリー(2019年2月16日 – 4月14日)に行ったのですが、 オリジナルの図面や家具、照明器具、ガラス器、建築模型などが展示され、パイミオのサナトリウムの病室を再現したコーナーや製作過程の記録映像などがありました。
ラウンジにあったアアルトの椅子は、長年使われた椅子だけがもつ温かみがあって、縁の擦れや小さな傷がいい感じ。
アアルトによる曲げ木の技法を紹介する展示。手にとって見ることができました。この「L-レッグ」が、スツールやベンチ、テーブルなどの家具になっていき、そして「Y-レッグ」「X-レッグ」と発展。「ラメラ曲げ木」技法にとつながります。
バーチ材のスリットにベニヤを挟むことで、曲げやすく強度が増すというL-レッグの部材。これを用いて最初の作品、スツール60が生まれたのですね。
照明も素敵でした。1939年にヘルシンキのレストラン「Savoy」のためにデザインされた「A330S Golden Bell」。
ちなみに「アアルト」とは、フィンラド語で「波」という意味。
波打つような曲線のサヴォイ・ベースは、もとは木型の中に流し込んで制作されていたそうです。その木型も展示されていました。
その後、「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展が、神戸の竹中大道具館(2020年3月28日~8月30日)、東京・世田谷美術館(2021年3月20日〜6月20日)、兵庫県立美術館(2021年7月10日〜8月29日)で開催されています。
(2021/08/21)
SEMPRE(センプレ)
インテリアショップ「センプレ」の実店舗は、東京都内に本店(池尻大橋)があります。暮らしのデザインにこだわったインテリア家具やハイセンスな雑貨・キッチングッズなどが揃っており、カタログやネットでの情報も充実しています。アルテックとは、15年以上前から販売契約済み。
※センプレ青山は2017年5月21日(日)をもってクローズ。「SEMPRE HOME」としてセンプレ本店と統合しました。